単身赴任の寂しさとどう付き合うか

単身赴任を始めた当初、会社から暗い部屋に帰って電気を点けると、えも言われぬ寂しい気持ちに襲われたものである。
しかし人間とは罪深い生き物だ。
1ヶ月もすると慣れてしまうのである。決して寂しくなくなったわけではないが、寂しい状態に慣れてしまうのだ。
もともと大人数でワイワイやるのが苦手で、家族だけで静かに過ごしたり、1人で過ごすのが好きだったので、慣れるのも比較的早い方だったのかもしれない。
しかし、今でも寂しさを感じる時はある。
平日は多くの人に囲まれているので、寂しいという事はない。金曜日になると、「明日から週末だ」とウキウキしてくる。僕は本宅に帰るのは大体月1回なので、残りは長野で1人で過ごすのだが、それでも金曜日はウキウキする。
週末はあっという間に過ぎて、日曜日の夕方になる。
1人でスーパーに夕食の買い物に行く。小さな子供を連れた、僕より少し若い家族が楽しそうに買い物をしている。
こういうのを見ると途端に寂しくなる。日曜日の午後というのは単身赴任者の僕にとって一番寂しい時間である。
「ああ、彼らはこれから家に帰って楽しい夕食なんだな」と思う。それに引き換え、僕は寂しく1人孤独な夕食なのである。
カートに乗せられた幼い子供と目が合う。両親が魚なんかに気を取られているのを確認してから、その子供に変顔をしてみる。子供は「誰だこのおじちゃんは」という顔でこっちをじっと見てくる。
それが楽しい(危ないオジサンである)。
家に帰って夕食を作り、テレビをつけてビールを開ける。アルコールが入ると寂しい気分もだいぶ落ち着く。日曜日の夜は家族とラインの画面通話で1週間の近況報告をするのが常となっている。
それで更に気持ちは落ち着く。明日からのまた仕事かと思うと若干気が重いが、週末はジョギングや水泳で体を動かしているので、健康的に疲労しており寝つきは早い。これは助かる。
寂しさから逃れよう、寂しさを消そうと思ってもそれは所詮無理である。なぜなら寂しい感情というのは自分の心から湧き上がってくるものであるから。
いっとき紛らわすことができたとしても、その後でまたより寂しさに襲われるものである。
であれば寂しい感情を恐れず、仲良く付き合ってしまうことである。
「ああ、自分は今寂しい感情に支配されているな。まあ仕方ないな」と客観的に自分を俯瞰してみる。
寂しさを忘れようと深酒をする、若い頃はこれも出来たが40代半ばにもなると翌日に響いてしまう。
今は寂しさ君を相手に酒を飲む、そんな感じで付き合っている。