単身赴任は生活力を上げるためのトレーニングだ

単身赴任を始めてから2年と3ヶ月、一人での生活にもすっかり慣れた。
僕はもともと炊事・掃除といった家事は好きで比較的得意な方だった為、苦にはならない。むしろストレス解消になっているくらいである。
一口に自炊とは言っても、限られた生活費の中でやりくりしなければならない。好きなものを食べていた若い頃と違って、栄養バランスも考えるようになった。鶏肉や魚、納豆や豆腐を食べることが増えた。一方揚げ物やカレーを食べることがグッと減った。
このような暮らしを続けている中で、少しづつ自分の生活力が鍛えられてきたと感じる。
限られた生活費の中で、自身の食事の準備をし、身の回りを整え、継続的にきちんとした生活をしていける能力である。
男女、既婚未婚にかかわらず、現代に生きるためには生活力を身につけることはとても大事なことだと思う。
今は単身赴任だが、いずれ一人の生活にピリオドを打ち、家族と一緒(と言っても子供には独立してもらいたい)の生活に戻れる日を拠り所にして単身生活を送っている。
しかし、実際のところ将来どうなるかは分からないのである。
ある日突然離婚届を差し出されるかもしれない(別に離婚されるようなやましいことはしていないけど)。あるいは妻が先に逝ってしまう可能性だってないわけじゃない。そんなことを考えたくはないが、実際そのような経験をして途方に暮れた人が沢山いるのである。
いざという時に備えて、一人でも生きていける生活力を身につけておくことは必要だ。
幸いにしてお互い元気で健全な夫婦関係が続けられたとしても、定年後も家事を妻に妻に任せっきりということは、もはやこの令和時代以降には通用しないであろう。
共働きがごく当たり前のこととなった現代でも、家事の負担率は妻の方が圧倒的に多いらしい。旦那の方が先に帰宅しているのに家事を何もやってくれず、「お腹減った、ご飯まだ?」と迎えられた妻の嘆きや愚痴はよく目にする。
そんな状況のまま定年を迎えて、これから妻との楽しい二人暮らしだ、とこちらがウキウキしているところに「これからもあなたの家政婦をやるのはもうウンザリ、私は一人で自由に生きていきます」と妻から三下り半を突きつけられる場面を想像すると背筋が寒くなる。
こちらが気付かぬうちに相手がストレスを積み重ねたのでは、夫婦での幸せな生活は出来ない。自らの生活力を高めるのは、自らの幸せな人生を築くためである。
安い食材でバランスの良い食事を自分で作り、数は少ないがきちんと手入れされた清潔な服を着て、物がないが埃もない部屋で暮らす。これが僕の目指す生活であるが、これに必要なのが、生活力の高さである。
その生活力を鍛えるための絶好のトレーニングが、単身赴任である。
かくして今晩も僕の得意料理の納豆チャーハンを作るのであった(←実は妻は納豆チャーハンが大嫌いなのだが)。