クールビズスタイルこそ、実はいちばん難しい
先生がいないという悲劇
7月も中旬を過ぎ、関東甲信越も梅雨明けした。本格的な夏がやってきた。
長野の街を歩くサラリーマンもすっかりクールビズのスタイルである。
しかし、僕と同年代くらいの人によく見られるのだが、スーツのスラックスに肘近くまである袖のダボっとした半袖のワイシャツ、というスタイルの人。これは残念なクールビズの見本みたいなものである。失礼ながらスマートとは言い難いし、仕事が出来そうには見えない。いや、本当は出来るのかもしれないが、見た目でものすごく損をしている。
仕方がないこととも言える。クールビズとは今から十数年前に突如として現れたファッション後進国の日本初の概念だ。お手本となる先生がおらず、教科書も無い様なものだ。これは悲劇だ。
偉そうなことを書いているが、僕の夏の普段の出勤スタイルはサマーウールのトラウザーに白かサックスのシャツ、ネイビーのコットンのジャケットである。得意先の上の方と会う時や本社の重役が出席するズーム会議の時は夏用のスーツを着る。そしてスーツを着る時はちゃんとネクタイをする、と決めている。
半袖シャツは、あり?
スーツの時は迷うところはない。スーツのルールというのは決まっているからだ。
しかしクールビズスタイルにおいて、いまだに自分自身の中で「これだ」という明確な答えが出ていないのが、シャツはどうすればいいのか、という点である。
端的に言えば、半袖シャツでもいいのか、ということである。
さまざまなファッション評論家の皆さんが「クールビズ」について語っている。「クールビズも一つのドレススタイルなのだから、出来るだけ崩さずに、少なくともシャツは長袖にしましょう」という高いハードルを示す先生もいれば、「半袖シャツもサイズとかディテールに気をつければ十分ありですし、別にポロシャツでもOKです」というおおらかな先生もいる。
そのような百花繚乱の価値観の中から、自分のスタイルを選ばなければならない。クールビズというのは楽なようで、一番難しいのである。
ヨーロッパでは長袖のシャツなんて着ている人はいないと聞く。一方アメリカでは普通にいるらしいし、この殺人的な日本の暑さの中ではやはり半袖も持っておきたいと思う。しかしやはりだらしなく見えたり野暮ったく見られるのは勘弁だ。
僕も、半袖のシャツは何枚か持っている。今日は来客も外出予定もない、という日(要するに上着を着る必要がない日)に着る。数年前に最初に土井縫工のオンラインストアで購入したのが、白のブロード生地のセミワイド、裏前仕立て、ポケットなしの言ってみれば長袖のドレスシャツの袖を半袖にしただけ、というシャツである。さすがは数多くのブランドのシャツのOEMを手がける土井のシャツだけあって、袖の長さ・シルエットは絶妙で、着た姿はスマートに見える。ポイントはサイズ選びだ。あくまでジャストサイズである。着心地が楽だからと大きいのを選ぶと中学生みたいになってしまう。
もう一枚は鎌倉シャツで購入したサックスのボタンダウン、裏前仕立て、ポケット付きである。これも悪くはないのだが、ディテールがちょっとごちゃごちゃしている様に見える。
試行錯誤の夏
今年もう一枚買い足そうと思っているのだが、非常に迷った。迷った末に出した結論がこれだ。
ディテールはスッキリしている方が良いから胸ポケットは無し。襟は第一ボタンを開けても様になるもの、ボタンダウンも良いと思ったがよりスッキリ見えるカッタウェイを試してみよう。色はサックスか白。予算は10,000円以内。ブランドはいつもドレスシャツを購入している土井縫工所か鎌倉シャツ。
調べてみたら土井で条件に合うシャツがあった(¥8,800)。鎌倉シャツの方は半袖シャツは基本的に全て胸ポケット付きの表前立てというカジュアルシャツのディテールで、半袖シャツは所詮ドレスシャツではないのだから、という考えだろう。これはこれで筋が通っていると思う。
というわけで、土井のシャツを注文することに決めた。
問題は着方である。一歩間違えると途端に野暮の極みとなるアイテムゆえ、これだけはやらないように気をつける、というのが、
- 間違えてもスーツのインナーに半袖シャツを着ない。
- 間違えても半袖シャツにネクタイをしない。
- 襟元からインナーのTシャツが見えないように気をつける。
の3点だ。
暑さの中で少しでも快適に仕事をする格好というと、ともするとだらしない方向に行ってしまいがちだが、見た目で損することもあれば、得をすることもある。どうせお金を出して買うのであれば、スマートに見える方を選びたいと思う。
こうして、今年も試行錯誤の夏が始まった。