単身赴任者が地元の人より地元に詳しくなる、という快感

長野に来て3年と3ヶ月になる。こちらに来てからのライフワークとなったのが、「安くて美味い店巡り」である。

安くて美味い店、というのは大抵が長いことやっている店だ。だから安くて美味い、の後に「古い」と入れても良い。そういう店は年配のご夫婦が若い頃からずっとやっている、というケースが多く、だから味も昔からそのままの素朴な味だ。長野にはその様な店が実に多い。

新しく出来た店というのは何らかの差別化が必要だから、味も旨味も濃くなりがちだが、そういうのに食べ慣れた舌で昔からやっている店の料理を食べると、最初は物足りなく感じるかもしれない。しかし、濃い味、濃い旨味の料理を食べると不思議と体が疲れる。一方素朴な料理というのはそれがない。なるほど、長いこと通いたくなる店というのは旨すぎない、ということなのかもしれない。

普段からその様な店の情報をせっせと収集し、行く候補の店を手帳に書き溜めている。そして週末が近くなると「今度の週末はあそこに行こう」と決める。自宅の近所の場合もあれば、車で1時間くらいかけて行くこともある。昨年からはそれをもうひとつのブログ「長野安くて美味い店」に、今年からはインスタグラムの投稿も始めた。気ままな食べ歩きが少しづつ趣味の幅を拡げてくれているのである。ちなみに、ブログに投稿した訪問店の数を数えてみたら79軒あった。

我ながらよく行ったもんだと思う。中には行ってみたはいいがいまいち気に入らず掲載していない店もあるので、実際に訪れた店の数はもっと多い。

これだけ行くと、一般的な地元民よりは地元の飲食店事情に詳しくなる。

もっとも高級な店とかお洒落な店、新たにオープンした話題の店などには疎いが、安くて美味いレバニラ炒めはここ、もつ煮はあそこ、うどんはあっち、というように、たまに会社でどこの店が美味い、などという話題になって自身の見解を披露すると、その詳しさに驚かれる様になってきた。

これが快感である。

都内に住んでいる人で、都内のニュースポットとかにうんと詳しいのは大抵地方から上京して来た人だという。これはよく理解できる。やはり他所から来た人の方がその街に対する好奇心は強い。僕自身だって長く住んでいた栃木の地元で行くのはお気に入りの店だけで、新しい店の開拓なんて全然しなかった。それともう一つ、地元で生まれ育った人に対するコンプレックスというか、彼らに一目置かれたいという下心も否定出来ない。

単身赴任、一人でこの街にやって来たのも何かの縁だ。単身赴任なんてロクでも無いと嘆く気持ちは十分に理解出来るが、そのロクでもない単身赴任期間もあなたとあなたの家族にとっては大事な人生の一期間だ。であれば気持ちを切り替えて、単身赴任先で過ごす週末は積極的に楽しもう。そして可能であれば地元の人以上に詳しくなる分野を一つでも作ろう。そうすればあなたが一人でこの地で過ごした期間も、きっと有意義なものになるはずだし、その方が絶対にお得だ。

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Tanoyatsu

40代半ば、妻と二人の女の子を残し、長野に単身赴任中。料理・掃除大好きのおばさん力高め男子。趣味は料理の他・ジョギング・水泳・乗り鉄。数年前から断捨離・ミニマリストに興味を持ち、「モノを極力持たないライフスタイル」をゆるめに実践中。