単身赴任の秋の夜長に、ひとりで煮魚を喰らう   

昨日、会社帰りに「ツルヤ」に寄ったらマガレイの切り身が半額で¥150で売っていた。半額とは言え¥150は随分安い。

迷うことなく買い物カゴに投入する。

いつからだろう、恐らくこの数年のことと思うが、カレイの煮付けがとても好きになった。淡白そうでありながら脂がのっていて、箸を入れるとホロリと崩れる。カレイに限らず、煮魚はサバもブリでも大好きで、見切り品で安く売っているのを見ると喜んで買ってしまう。

単身赴任の料理に煮魚とはちとハードルが高そう、その様に思われるかもしれないが、実際そんなことはない。手間自体は肉野菜炒めと同じくらいである。

僕の場合は、深めのテフロンフライパン(これが唯一の調理器具である)に醤油1;みりん1;酒1;砂糖1;水1を入れて火にかけ、わーっと煮立たせる。そこに魚を入れる。ポイントは必ずわーっと煮立ったところに魚を入れることである。ぬるい所に入れてしまうと絶対に生臭くなり、一度生臭くなったらもう二度と取り返しがつかない。

アルミホイルを丸く整形し、魚に被せる様にする。すると煮汁がうまく魚の表面にも回って、少なめの煮汁でもちゃんと全体に味がつくのである。これで10分弱煮る。煮汁が煮詰まってくる様だったら少量の水を加える。

ここからが二つ目のポイントなのだが、5分強煮たら火を止め、シャワーを浴びる。その間、当然鍋の中の煮魚は冷める。この冷める時間が重要なのだ。冷めることで味が染み込み、馴染んで美味しくなるのである。

新しい下着に着替えて、再び鍋をガスにかける。その間にご飯や酒をいそいそと準備する。翌日が休みであれば日本酒なんか最高なのだが、あいにく明日も仕事であるのでビールで我慢することにする。

この甘辛く煮付けた煮魚っていうのが酒にもご飯にも実に合うんですね。

真夏の蒸し暑い夜だと魚を煮ようという気にはなかなかならないが、涼しくなってくると煮魚が恋しくなる。不思議なもので、肉よりも魚を食べていた方が不思議と気持ちが穏やかになる。

ただし魚といってもトロの握り寿司なんかではダメだ。例えば女性と一緒に寿司屋のカウンターでトロの握りなんか食べていると、次第にギラギラした気分になってくる(そんな経験はないが)。

しかし煮魚の場合、女性と一緒に小料理屋でカレイの煮付けなど食べても、「さあ、食べ終わったらタクシー乗り場までお送りしましょう」と紳士的に振る舞える気がする(そんな経験もないが)。

秋の夜、窓の外からは虫の音が聞こえてくる。涼しい風、一人の食卓には煮魚、お浸し、日本酒。

侘しいながら、実に良い夕餉ではないか。

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Tanoyatsu

40代半ば、妻と二人の女の子を残し、長野に単身赴任中。料理・掃除大好きのおばさん力高め男子。趣味は料理の他・ジョギング・水泳・乗り鉄。数年前から断捨離・ミニマリストに興味を持ち、「モノを極力持たないライフスタイル」をゆるめに実践中。