【究極のブレザー】D.C.WHITE ウエポン・ブレザーを買った【解説とレビュー】
9月中旬でもまだまだ暑いが、秋に向けて久々に、というか今年初めてのオフの日用の洋服を買った。
前回このブログでもお話しした通り、アラフィフに差し掛かって、自身のファッションのアップデートのために、オフの日用のジャケットがブレザーが欲しいと思っていた。
今までの僕の休日の生活スタイルだと、ジャケットやブレザーが必要となる場面というのはほぼなかった。出かける先はせいぜいラーメン屋やスーパー、図書館くらいなものである。しかし、50代になったらちょっと洒落たビストロにも行ってみたいし、美術館にも行ってみたい。高級ホテルのラウンジに行くこともあるかもしれないし(ないかな)、ガーデンパーティーに招かれるかもしれない(これはまずないだろうな)。
そこまでかしこまった場面でなくとも、50代にもなればジャケットやブレザーを日常でもさりげなく羽織れるようになりたいという思いが強くなり、折に触れて探していた。
そんな僕が出会ったのが、「D.C.WHITE(ディーシーホワイト)」のウエポン素材を使用した紺ブレザー、「WEST POINT OFFICER BLAZER(ウエスト・ポイント・オフィサー・ブレザー)」である。
D.C.WHITE(ディー・シー・ホワイト)とは
D.C.WHITEは2016年に立ち上げられた日本の服飾ブランド。スタイルの基本はアイビールックだが、そこにヨーロッパのエッセンスも加え、現代風に解釈した新しいスタンダードスタイルを提唱している。
歴史は浅いブランドだが、素材・ディテール・シルエット、縫製に対するこだわりは強く、本格志向である割には手に届きやすい価格ということもありファッション好きの間では早くも定評を確立している。僕のファッションの師匠、BoysmarketでもD.C.WHITEの製品は何度も紹介されたり、別注商品を作ったりしている。
作り手自ら「究極」という、このブレザーのすごい点
このブレザー、作り手であるD.C.Whiteのディレクター石原氏自らが「究極のブレザー」と言っている。これまでも数多くのジャケットやブレザーを世に送り込んできた石原氏自らが、この1着を「究極」と言わしめる点はどこにあるのだろうか。
素材は本物のウエポン
このブレザーに使われている素材は、「ウエポン」というチノクロスの一種である。
「ウエポン」という名前の由来は、米国の「ウエストポイント陸軍士官学校」という、エリートの軍人を育成するための学校にある。ここの制服に使われていた生地は、使われる糸は縦36番・横24番のそれぞれ双糸で、1インチ当たりの打込み本数は縦108本・横60本と厳格な決まりがあった。
素人の僕にはよくわからないが、要するに細い糸を2本撚り合わせたのをギュッと密に織ることで、タフでしかも美しい光沢がある生地が出来るのだという。
「ウエポン」自体は決して珍しい生地ではなく、昭和30年代くらいには日本でもちょっと上級の作業着などにはよく使われた、タフで実用的な生地という位置付けだったらしい。今でも「ウエポン」使用を謳う製品は結構あるが、もはや日本に36番や24番の双糸はないため、単に番手の違う双糸を使っただけの「なんちゃってウエポン」も結構出回っているという。
かといって今再び正真正銘のウエポン生地を再生産することは、ロットがあまりにも大きく非現実的なのだとか。
このブレザーに使われているのは正真正銘本物の「ウエポン」で、米軍向けに作られた「ミルスペック」である。25年ほど前に織られた染色前の生地がメーカーの倉庫に眠っていたのを見つけたのが、この製品の企画の発端となったらしい。
この貴重なウエポン生地が石原氏の手に委ねられたのは誠に幸いというほかないではないか。
ちなみにこのウエポン記事を実際に使った制服の画像を探してみたが、残念ながら見つけることは出来なかった。
染めのこだわり
この生地が倉庫で見つけられた時点では染められる前の生生地だったが、石原氏は使い込むほどに格好良く色落ちしていくことにこだわったのだという。
同じ紺色でも、染料によっては色落ちするにつれて赤みがかってしまうらしいのだが、そこをヴィンテージのように徐々に白茶けていくような染色になるように、試行錯誤を繰り返した。
ディテールへのこだわり
スタイルは3つボタン段返り、半裏仕様、センターベント、パッチ&フラップのポケットとブレザーの基本をきっちり押さえている。それでいて着た時のシルエットは現代に合わせてアップデートされている。
紺ブレザーのアイコンであるメッキボタンは、わざわざボタンの博物館に行ってこのブレザーに相応しいメタルボタンを研究し、時間が経つほどに格好良くエイジングしていく様な、オリジナルボタンを一から作ったのだという。
テーラー出身の石原氏らしく、着用した時のシルエットにも並々ならぬこだわりが見える。
衿ぐりの後ろ中心をやや高めにし、襟が首に自然に沿うようにデザインされている。ウエポンというがっしりした素材ゆえ、肩の縫い目の部分はどうしても角が立ちがちなのを、少し肩を中に入れることでなだらかでナチュラルなラインに仕立てられている。
また人が自然に立っている時の姿勢に合わせて、袖が若干前振りになるように仕立てられている。
「神は細部に宿る」というが、細部にこれでもか、というこだわりが詰まったこのブレザー、税込¥55,000という価格ではあったが、これを買わずして何を買えというのか。サイズスペックを慎重に確認して、ポチってしまった。
実際に着てみたら
170cm、61kgのの僕は手持ちのジャケットに合わせて44サイズを選んだ。
生地の見た目はチノパンのチノクロスに似ているが、チノよりもきめ細かくて、とても美しい光沢がある。触ってみた感触はがっしりしている。
羽織ってみると結構重量感がある。僕の手持ちのスーツのウールジャケットより重い。しかしオーダージャケットの如く肩のラインにピッタリ合っているシルエットのおかげで、どこか一点に重さが集中するようなストレスはない。
レギュラーフィットで、44サイズとしては肩にほんの少しのゆとりを感じるが、これはおそらく洗いにかけてわずかに縮ませることで本当のジャストサイズになると思う。それでも中に少々着込んでも問題はないだろう。
シルエットがとても良い。特に気に入ったのが石原氏がこだわった肩のラインで、なだらかに肩に添い、丸く柔らかい印象を出している。ボックスシルエットではあるのだが、程よく体に添い、スタイルをよく見せてくれる。
これはいい買い物したぞ。
まとめ
ラフな格好に羽織ればちょっと引き締めてくれ、ドレス寄りな格好に羽織ればちょっと和らげてくれる。
僕のように、初期投資は高くてもきちんと丈夫に作られていて、トレンドの移り変わりにも強く長く着られ、着込んでいくほどに格好よくなる服を求める者にとって、このようなブレザーに出会えるチャンスは、一生のうちでもそうそうないと思う。
10年後、格好よく色落ちしてくたびれたこのブレザーが似合うようなアラ還男子を目指したい。
そういう意味では、このブレザーは僕にとって最高の友人にもなりうるし、僕を鍛えてくれるライバルにもなりうると思っている。
再生産が現実的には不可能な限りのあるデッドストック生地で作られているので、これが欲しい方は一刻も早く検討することをお勧めしたい。
最後に、この製品が不自然に安い価格で売られている怪しいサイトもあるが、決して安売りする様な物ではない。くれぐれも騙されないようにご注意願いたい。
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