ミニマリストの視点で都築響一氏の写真集「TOKYO STYLE」を見たら興味深かった

本宅の本棚に、写真家・都築恭一氏の「TOKYO STYLE」と言う写真集がある。

80年代終盤から90年代初頭にかけて撮影された、当時の東京に住む若者の、ありのままの住まいを記録した写真集である。買ったのはもう20年以上前だ。当時で確か1万円くらいした。

これが今見ると、極めて興味深い。

撮影の対象は一人暮らしの若者が多いのだが、夫婦もあれば子供のいる家庭もある。それらに共通するのが、どの部屋も程度の差こそあれ、今の僕から見れば物が溢れているということである。

物が多くても、整理整頓された部屋、雑多に散らかった部屋様々ではある。そして中には、この部屋の住人もしかしたら今ではミニマリストになっているのではないかな、なんて予感させる部屋もほんのわずかだがある。ちなみに見るに耐えないような不潔な部屋は掲載されていないのでご安心を。

撮影当時の80年終盤から90年代初頭というのはまさにバブルの頂点に向かって日本中が沸き立っていた時期、当時は消費こそが正義の時代の絶頂だったのだろう。

僕自身で言えば、地方在住の地味な中学生であったが、やはり物を増やす=生活が豊かになるという価値観の中で生きていたように思う。当時は鉄道模型にハマっており、小遣いを貯めてはコツコツと買い足していき、徐々にコレクションが増えていくことにこの上ない満足感を覚えていた。

当然ながら、当時はミニマリストという概念などなかったはずである。調べてみたら、ミニマリストという概念が海外から出てきたのが2010年頃らしい。

何もない茶室に美を感じる日本人には、ミニマリストという概念は結構受け入れやすい素地があったのではないかと思う。

長く続いた不景気や、震災による将来への不安もミニマリストという概念が受け入れられる一因であったのではないかと思う。なぜなら僕自身がまさにそうだったからだ。

そしてスマートホンやタブレットといったデジタルツールが、部屋から電話や、ラジカセや、CDや、文庫本や、雑誌を無くしても十分快適で文化的な生活を送れる環境をもたらしたことで、ミニマルライフに共感する人が一定数現れたのではないだろうか。

僕も世の流行に遅れること数年、ミニマリストの潔くて身軽な生き方に出会い、すっかりミニマル思考に浸かっている。

久々にページをめくったTOKYO STYLEは、そんな僕の目にはとても新鮮に映った。

物に囲まれた部屋の風景をみて、「ああ、そう言えばちょっと前は誰の部屋もこんな感じだったな」と懐かしく思い出す。それらの部屋の居心地はとても良さそうであった。

そして叶うことなら、「TOKYO STYLE2020」を是非見てみたいと思うのである。

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Tanoyatsu

50歳。単身赴任8年目。料理・掃除大好きのおばさん力高め男子。趣味は料理の他・ジョギング・筋トレ・古い食堂巡り・乗り鉄。10年ほど前から断捨離・ミニマリストに興味を持ち、「モノを極力持たないライフスタイル」をゆるめに実践中。