単身赴任を決めた日
数年前から覚悟はしていたし、数ヶ月前の社長との面談でも転勤を暗に伝えられていたので、1月中旬に転勤の内示を伝えられた時もそれ自体に驚きはなかった。
しかし行き先が「長野支店」であることはまったく想定しておらず、これには自分も妻も驚いた。
面談の時社長に「どこか行きたいところはあるのか」と聞かれて関東の某事業所であることを伝えたら、えらく社長の反応が良かったからである。
あとで聞くと当初は自分の希望通りの計画で進んでいたようだが、諸々の事情で長野支店行きに決まったようである。
家族は妻と歳の近い二人の女の子。栃木県の持ち家で暮らしている。
子供が受験期に入る為、転勤となった場合は僕が単身赴任とすることはあらかじめ家族で決めていた。
単身赴任自体は望むことではない。僕も家族も不安なことだらけである。経済的なこと。精神的なこと。女所帯となる自宅の安全面。今まで自分が一手にやってきた庭の手入れはどうするのか。
しかし、北関東の片田舎のこの小さな事業所にしがみついていてはこれ以上のステップアップは望むべくもない。何より、転勤は可能という条件で入社したのである。
子供が生まれ、翌年に中古住宅を買い、それを理由に長期間にわたって転勤を猶予してもらった。個人の事情を割と考慮してくれる会社で、この点においては今でも会社に感謝している。
これ以上わがままばかりも言っていられない。何せ、ここに来た時とはもはや立場が違う。
仕方ない。
単身での転勤を決めた。