南極の昭和基地で働く人もパタゴニアのベースレイヤーを愛用しているらしい
先日、勤務先のイベントで南極の昭和基地で働いた経験のある方の講演を行なった。僕は開催側のスタッフを務めたので、講演者の方と雑談する時間があった。
その方は昭和基地の設備の保守整備をする仕事で、1年と2か月南極に滞在していたという。
僕の興味はもっぱら南極ではどんな服を着ているたのかということで、実際に南極で着用していた防寒用の上着も見せてもらった。鮮やかなオレンジ色の表面は防風・防水性のあるゴアテックスで、内側は暖かそうなダウンがたっぷり入っていた。実際にはダウンよりも発散性・早乾性に優れた化繊の綿を使っているらしい。残念ながらブランドタグまでは確認できなかったが、パタゴニアのウェブサイトで調べてみたら「ストームシャドー・パーカ」が近いと思う。ちなみに防寒着は入札で決められて、講演者の時は「ザ・ノースフェイス」の特注品であったとのことだ。
アンダーシャツは必要最小限の数は勤務先の会社から支給され、それらは「パタゴニア」とか「モンベル」だったとのこと。普段からパタゴニアとモンベルのアンダーシャツを愛用している僕は嬉しくなった。
またその方は、支給分だけでは心許ないと考え、自分で購入したユニクロのヒートテックも持って行ったらしい。これは意外だった。なぜならヒートテックは汗と反応して自ら発熱するが、発散性は低いので一旦汗をかくと汗冷えしてしまうからだ。南極の過酷な環境下で汗冷えしてしまっては、命に関わる。
でも聞いてみると、屋外での作業時ではヒートテックは着用せず、もっぱら休日に室内で過ごす時専用にしていたらしい。ちなみに昭和基地の室内は15度ほどに保たれており、厚着をしなくても快適に過ごせるとのことだ。
しかし、冬期ブリザードに遭った時は、自分の手さえ見えないくらい視界が悪くなるという。ほんの十数メートル隣の建物に移動するために外に出たが、そのまま方向がわからなくなり遭難して命を落としてしまった方もいたという。そのため、現在では建物の間はごく近い距離であってもロープで繋がっており、視界が利かないほどのブリザードの時に止むを得ず外に出なければならない時は、そのロープを伝っていくそうだ。
やはり南極の過酷さというのは普段日本でのうのうと過ごしている僕たちには想像もつかない。それでも、昭和基地は南極の中でも比較的穏やかな気象条件の地にあり、アメリカやロシアの基地はさらに過酷なのだという。
僕がこれから南極に行く可能性は限りなくゼロに近いが、実際に南極に行った方のお話を聞けたのは良い経験だったし、過酷な環境で働く人たちの身を守っていたのは僕らが普段愛用している身近なブランドであることを知ってとても嬉しかった。
「南極で着るものにそんなに興味を示された方と話したのは初めてです」と笑われたが。