単身赴任のぼっち休日の味わい方を先輩風吹かせて語る

仕事の平日が日常であれば、その後にやってくる休日もまた日常である。
どこか遠くに旅行に行くとか、新しいアクティビティに挑戦するといった非日常な休日も良いが、毎週そのように過ごすわけにもいかない。
70万人とも100万人とも言われる単身赴任者にとっての休日の過ごし方は様々であろう。
毎週本宅に帰って家族と時間を過ごせる人もいれば、帰りたくても遠距離で滅多に帰れない人、近い距離でも夫婦家族との心理的な距離が遠くてしばらく帰っていない人…
僕はといえば、栃木の本宅へは月に1回程度帰っている。当初はもう少し頻繁に帰りたいと思ったが、主に経済的な理由で月1の帰宅のペースが定着してしまった。
従って、残りの月の3〜4回の週末は単身赴任先の長野で過ごしている。
最初のうちは初めて住む長野が物珍しく、週末になるとあちこち出かけていたが、近場はあっという間に行き尽くしてしまった。遠出もそうそう毎週出来るわけではない。
そうすると必然的に、大部分の週末は少なくとも長野市内か、せいぜい近隣地区あたりで過ごすことになってくる。
幸い、数年前に初めたジョギングという趣味がある。
とりあえず日曜日の朝になると自宅を軸に東西南北、今日はここまで行こうと決めて10〜20km走っている。
知らない街の知らない道を走る、これは楽しい。車で通り過ぎる時は気付かない、美味しそうな店や古い建物を見つけたりする。ジョギングといっても半分散歩みたいなもので、途中で写真を撮ったり、コンビニでスイーツを食べて休憩したり、20km走るのに3時間くらいかけている。
昨年の夏からは水泳も始めた。これも家から車で10分くらいのところにある「サンマリーン」というゴミ処理施設に隣接した公営の温水プールである。ものすごく立派で綺麗な施設である。
何せ泳ぐのは小学生以来30数年ぶりである。スポーツ用品店に行って、ピッチリしたカッコいい水着を購入し、ムダ毛も手入れした。見た目はバッチリだが、これで溺れたのでは格好悪すぎる。恐る恐るクロールで泳いでみたが、30数年ぶりにしてはちゃんと泳げた。嬉しかった。
かくして、土曜日の夕方は水泳、日曜日の朝はジョギングというルーティンが出来た。
最近この活動を「ぼっち部」と名付け、自らを部長兼部員兼マネージャーに任命した。
日曜日の午前中、2〜3時間走り終えると腹ペコである。ぼっち部給食の時間は安くて美味しい店への探検である。おかげでお気に入りの店は何軒も出来た。
食べ終わると大体、ぼっち部文学部の活動として図書館へ行く。市内中心部には立派な図書館があるのだが、僕のお気に入りはちょっと郊外へ行った中規模の図書館である。ここは規模もそこそこであるので本が探しやすいし、学校の図書館のような雰囲気が心地良い。大体小説を1冊読む。途中でついうつらうつらしてしまうこともあるが、これがまた気持ち良い。
その後、スーパーに行って夕食のおかずを買い、家に帰って料理をして一人で晩酌である。平日は発泡酒1本だけだが、週末はカップ酒を買ってきてそれに合うつまみをちょこちょこ作ったりする。
寂しさを覚えるときももちろんあるが(特に日曜日の午後)、無理に紛らわせることはしない。紛らわせようとしてもその後により強い寂しさに襲われるからである。
むしろ「ああ、自分は今寂しい気持ちに包まれてるな」と客観的に見て、寂しさを味わうことにしている。
そんな時は賑やかなテレビよりもラジオの方が良い。日曜の夜の静かな語り口のラジオは心を安らげてくれる。
派手に遊ぶ金はない。友達もいない。
無いものは無いで仕方がない。それでも結構充実した休日を楽しんでいる。これこそミニマリスト的リア充と言えるのではないだろうか。